チーズ生産は手工芸であり、多くの専門知識以外にも豊富な指先の感覚や精度が要求されます。この工程の多くは今でも数百年前と変わりません。チーズの製造を9つの工程でご説明し、それに伴いスイスの歴史も少々お話させていただきます。
スイスチーズはチーズ製造所に一日に2回納入される新鮮な生乳から製造されています。生乳の特性しだいで最終製品であるチーズの性格が決まります。
スイスチーズには700種類以上もありますが、全てに一つだけ共通点があります:製造原料はスイス産の生乳です。チーズの大部分は牛乳から生産されます。酪農家は一日2回チーズ製造所に健康な家畜から取った新鮮な可能な限り細菌を含まない生乳を納入します。同じ原料から豊富な種類が得られます。家畜の種類、飼料、気候、生乳の脂肪分、多様な細菌叢、熟成やケアの方法等多くの要因が各チーズローブに固有の性格を出させます。
生乳は納入されると品質検査及びろ過されます。生乳は特に集中検査を受け – 生乳チーズが生産に指定されていない限り、生乳は大切に加熱処理ないし滅菌処理されます。
生乳の細菌学的、感覚的組成を検査します。次の基準を特に用いて判定します:
チーズ製造所は生乳チーズ製造をさらにチーズ製造所固有の試料を使って確実にしています。真の生乳チーズでなければならないという仕様でない限り、生乳は変質させない程度に熱処理され、加熱処理(最高63°C)ないし滅菌処理した牛乳(最高72°C)を準備します。
釜の中に生乳を入れ、攪拌しながらゆっくり加熱します。次に乳酸菌とレンネットを添加し、 凝結させます:濃縮の結果ゼラチン状の塊状になります。
«チーズ釜»に入れた生乳をゆっくりと30~32°Cに加熱します。次にチーズ職人が特殊な乳酸菌培地とレンネットを添加して混ぜます。培養菌を添加することで釜の中のミルクの酸度が高まり、これによりレンネットの作用が強くなります。次に生乳を攪拌し、35~40分後に出来上がります:レンネットにより生乳が凝結し、いわゆる濃縮されます。次に釜の中にゼラチン状の塊、つまり滑らかなプリンに似た塊ができ、これを次の処理します。
スイスの周知のAOPチーズには約40年前には生乳に自然に存在していたが、それ以来アグロスコープ・リーベフェルト・ポシュー社が継続培養し、同社でマスターバッチとしてチーズメーカーに出荷していた細菌を使用します。
レンネットは子牛(や子ヤギまたは子羊の胃)のそ嚢、特殊細菌培養(微生物)や - ごく稀に - 植物(チョウセンアザミ属、Solanum dobuim)から抽出したり、液体または粉あるいはペースト状にして使用します。遺伝子操作により生産されたレンネットはスイスでは使用されていません。
数グラムのレンネットで1000ℓの生乳を凝結させるのにじゅうぶんです。レンネットには生乳を凝結させるだけではなく、チーズを食べるまで熟成させるのを助けます。
ここでチーズカッターを使用します:このカッターでゼラチン状の塊をカットし、チーズブレークが生じます。この粒によってチーズのタイプが決まります – 粒が細かい程チーズは硬くなります。
ゼラチン状の塊が仕様の硬さになったら、チーズカッターでカットされます。チーズカッターにはワイヤーやナイフを付けてあり、ゼラチン状の塊をカットします。カットによって生じる粒のことをブレークと呼びます – カッターとの接触時間がが長いほど、粒径が小さくなり、結局チーズは硬くなります。ブレークが細かいほど、チーズに残る水分は少なくなります。このプロセスはチーズの種類にとり決定要因です – このためこの工程ではチーズ職人の高精度な操作が要求されます。
チーズの粒を攪拌し、加熱する – チーズを硬く仕上げたいほど温度を上げます。こうしてチーズ分割体はさらに硬くなります。
カットした塊を次に攪拌し、ゆっくりと加熱します。チーズの水分が深く行き届くようにする場合、加熱温度を高くします(ハードチーズとベリーハードチーズで約51~58 °C、ソフトチーズで約35 °C)。攪拌と加熱によりチーズの角が収縮し、ホェイが排出されます。チーズ分割体が硬化します。
ホェイは本来チーズ製造の廃棄物です – これは緑がかった液体で、カット工程においてゼラチン状の塊からにじみ出てきます。ホェイはポンプで排出され、通常は再度遠心分離され、継続処理されます。周知のホェイ製品には例えばホェイドリンク、ホェイバターやホェイチーズがあります。ホェイパウダーとしては加工食品や化粧品にも使用されます。しかし大部分のホェイは家畜の餌として使用されます。
ご参考までに:«ホェイ»、«ショット»とか«ジルテ»という呼び方がされますが全く同じホェイを指します。«ホェイ»はドイツ語圏でモルケとして周知の物です。
チーズが望みの硬さになると型に充填されます – 底の孔を通してホェイが排出されます。さらにカード全体をプレスし、さらに液体を絞り出します。
チーズがちょうどよい硬さになったら、ホェイ(乳清)といっしょに多孔プレス型に充填されます。ホェイが流れ出て、チーズは型に留まります。直ちに識別用のチーズブランド名を«チーズの証明書»としてさらにプレスカバーを載せ、チーズをプレスします。この工程でチーズの目的の形状ができあがり、ホェイがさらに排出されます。
次の手順が塩浴です:浮いているチーズは塩を吸収し、ホェイを排出します。表皮がゆっくりとでき、味が濃くなっていきます。
チーズのサイズに応じてチーズは数時間から二日間、塩分約22 %、温度約15 °Cの塩浴に浸けます。塩分濃度が高いためにチーズからホェイがさらに抽出される一方、チーズが塩分を吸収します。この工程でチーズが固化し、表皮ができます。この工程でチーズに外界の影響からの保護や形状安定性が付与されます。また、塩浴により表面に望ましくない細菌が発生しません。塩を吸収するとチーズがおいしくなります。
興味深い点:塩の水溶液濃度1.15 kg / l のおかげで重いチーズローブでも塩浴では浮きます。
熟成用セラーの中でチーズにはいくつかの変化が生じます:表皮が形成され、内部の色が変わり、孔が発生し、チーズが硬くなります。アフィナーはよくハーブやサイダーさらに白ワインを添加することでチーズの味を上品に仕立てます。
熟成用セラーへと続く:チーズの熟成はチーズの中で起きる酵素反応工程全体を指します。これを通してどちらかという味がないフレッシュなタンパク質から滑らかでおいしく、多くの特徴を持つチーズになります。
チーズの熟成はチーズの外見、化学的、微生物学的変化をもたらします:
熟成は数日から数カ月、あるいは数年にも及びます。熟成期間中にチーズがしっかりとしたカードに固まります。熟成期間はチーズの種類やサイズにより異なり、仕様書及び市場規制により定まっています。
チーズの熟成をアフィナージュとも言うことがあります。アフィナーが熟成期間中にチーズの最後の磨きをかけ、アフィナーが最も熟成して初めてチーズは出荷されます。このタイミングの判断には特殊知識を要します。サイダー、白ワイン、特別なハーブゼリー等を添加し、この段階でチーズのアロマに手を加えます。
これはよく議論されるテーマで多くの推論が交わされます:チーズの孔はいったい何のためにあるのでしょうか?
ガスを生成する微生物は二酸化炭素CO2を排出します。硬めのチーズではCO2がチーズを均一にゆっくりとは通って排出されないので、ガスが多く発生する個所では大きめの不規則な孔ができたり亀裂が発生しやすくなります。
ソフトなカードの場合CO2が均一に分布し、ブレークした粒がしっかりと凝結し合っていない個所ではだんだんと均一な大きい孔に«育つ»傾向があります。CO2はよく水に溶けるので穴が良好に発生します。
これでわかりました! チーズにできる孔の疑問が解けました。
最終段階でチーズを様々な検査に掛けます。孔の形成、カードの品質、味、外見が検査対象です。その後チーズは出荷されます。
チーズは販売されるまでに詳細に検査されます。こうして最高品質のチーズのみ販売されるようにしています。孔の形成、チーズのカードの品質、味、外見(形と保存)を管理し推計します